手外科センター

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整形外科

当院の専門センターのご案内

手の先天異常や腕神経叢損傷など幅広い治療が可能です。

一般の方へ

1. 手外科センターについて

当院は手や肘の外傷・疾患治療の多い病院です。平成26年8月から、院内で新たに「東京労災病院手外科センター」の名称を設け、今まで以上に手や肘の外傷・疾患でお困りの患者さんの期待に、応えて行きたいと考えています。

病院の位置する東京都大田区の大森・蒲田地域は「物づくりの町」として全国に知られる地域です。このような環境もあり、手の外傷が多い地域です。さらには、羽田空港に隣接するため、空港での業務に加え空港拡張建設業務による手指外傷も少なくありません。外傷は受傷後早期から適切な対応が求められ、適切な初期治療をすることで、後の機能障害をより少なくすることが可能です。また、外傷のみならず腱鞘炎やしびれをきたす疾患、腫瘍など幅広く対応しています。

【受診方法】
当院手外科センターは、従来、整形外科におきまして「手・肘外科外来」と称して行ってきた外来を「手外科・肘外科外来」と名称をあらため平成26年8月から外来日を拡大し、月曜日午後の時間に「手外科・肘外科外来」を開設、手や肘の疾患・外傷に取り組んで行く所存です。
注:整形外科午前中の一般、外来受診も可能です。より専門的な治療が必要となる場合には「手外科・肘外科外来」を受診ください。

【手外科・肘外科外来】
毎週月曜日午後1時30分〜3時30分(受付:3時まで)

2. 東京労災病院手外科センターでの治療-治療の対象となる疾患・外傷-

A 外傷

1)手指の骨折、手関節・肘関節の骨折(図1)
小児の肘周辺骨折は早急な治療を必要とする場合が少なくありません。適切な治療は後の障害を少なくします。

図1

2)靱帯損傷
肘の内側側副靭帯損傷はピッチャーにしばしばみられる傷害です。大リーグでは機能再建術としてトミー ジョンTommy John手術がしばしば行われます。(日本人大リーガーでは松坂選手がこの手術を受け有名になりましたがその他、大塚・田沢・藤川・和田選手らも受けています。

3)手の筋肉・腱断裂
筋・腱断裂は切創、挫創によるものが主ですがスポーツ活動など、急激に力を入れることで生じる皮下断裂があります。つき指で指伸展障害を生じる腱性マレット指やラグビー選手に生じる指の屈曲障害(ジャージーjersey外傷)がよく知られます(図2)。

図2

4)手・前腕の神経断裂(図3)
手指は細かい作業が要求されます。断裂した神経は早期に修復することが大切です。

図3

5)手・前腕の血管損傷
血管損傷による出血は生命予後に関わりますし、伴走する神経の損傷を合併することが少なくありません。

B 炎症性疾患:腫れや熱を持っている状態を炎症といいます。

1)手・前腕部の感染(図4)
一般細菌感染(化膿性関節炎や骨髄炎など)、特殊な菌による感染(結核菌や非結核性抗酸菌感染症など)。

図4

2)関節リウマチによる手・指、肘関節障害(後述)
リウマチ・膠原病に伴う関節障害、腱断裂等です。

3)機械的刺激による炎症
代表的なものに腱鞘炎があります。指腱鞘炎(ばね指)(図5)、ド・ケルバン狭窄性腱鞘炎、上腕骨外上顆炎(テニス肘)などです。

図5

C 絞扼神経障害

脊髄から分かれ、上肢・下肢に行く神経の障害です。上肢では手関節部・肘関節部で神経に対する圧迫で生じます。

1)手根管症候群(図6)
手関節部で正中神経が拘扼される神経障害です。中年以降の女性に多く発症し、母指(親指)〜中指のしびれを特徴とし、進行するとつまみ動作に支障をきたします。

図6

2)肘部管症候群(図7)
肘内側で尺骨神経が拘扼される神経障害です。スポーツや手を使う作業に従事する方に多くみられます。進行すると骨間筋の筋萎縮を生じます。

図7

3)その他
胸郭出口症候群、前骨間神経・後骨間神経麻痺、ギオン管症候群など。

D 変性疾患

代表的なものに変形性関節症があります。多くは加齢に伴うものですが、職業やスポーツ活動、外傷や素因に関連したものも少なくありません。

1)指の変性性関節症(図8)
指先に近い関節症はヘバーデンHeberden結節といって中年以降の方にはしばしばみられる変形です。指中央の関節症はブシャールBouchard結節といいます。

図8

2)手部の関節症
母指CM関節症(図9)が有名です。親指のつけ根の関節症で、つまみ動作の際、痛みが出ます。

図9

3)変形性手関節症
外傷後や重労働により生じますが比較的稀です。

4)変形性肘関節症
スポーツマンや重労働に従事する方にしばしばみられます。関節可動域制限と時には肘部管症候群の一因となります(図7)。

E スポーツ傷害

代表的なものに、若年者の野球肘傷害があり(離断性骨軟骨炎、図10)は大きな問題となってしばしば、新聞に取り上げられています。

図10

F 手の腫瘍

手や前腕の腫瘍は良性のものがほとんどであり、当科では通常、良性腫瘍を治療対象としています。よく見られる骨の腫瘍としては内軟骨腫(図11)や骨嚢腫、軟部(骨以外)の腫瘍としては爪下のグロムス腫瘍(図12)、腱周囲に発生する巨細胞腫(図13)、しびれや痛みの原因となる神経鞘腫、中にゼリー様の粘液がみられるガングリオンなどがあります。

図11
図12

図13

G 関節リウマチによる手の障害

関節リウマチでは手の障害が多くみられますが、早期の診断と治療開始が後の障害を少なくします。当科では手・肘の外科外来に併設して日本リウマチ学会専門医によるリウマチ外来を行っています。手の変形ではMP関節尺側偏位(図14)、「白鳥の頚変形」や「ボタン穴変形」(図15)がよく知られますが腱断裂も少なくありません。この様なケースには手術も有効ですが近年、手指や肘の人工関節手術も増えています。

図14
図15



医師の方へ

1. 手外科専門医とは?

 わが国では、医師国家試験に合格した医師は、自由に標榜科目を選ぶことができますが日本専門医制評価・認定機構では、加盟している各学会と協調し5年間以上の専門研修を受け、資格審査ならびに専門医試験に合格して、学会等によって認定された医師を専門医と定義しています(平成28年1月現在)。なお、平成29年4月からは日本専門医機構による新たな専門医制度がスタートします。

 手外科専門医の取得には基本領域専門医(整形外科あるいは形成外科専門医)取得後、更に3年以上の手外科研修を得て専門医受験資格を得ることから始まり、専門医試験に合格して、初めて手外科専門医となります。手外科専門医は整形外科・形成外科専門医のいわば2階部屋に相当するものです。このため、ハードルも高く平成28年1月現在、全国の専門医数は779名とまだまだ少ないようです(ちなみに、整形外科専門医は17,986名、形成外科専門医は平成27年で2,392名とのことです)。

 今後、ますます専門的知識・高度の技術が要求されますので、手外科専門医の役割が広がるものと思います。

2. 手外科研修医の募集

 東京労災病院は日本手学会手外科研修認定施設として、手外科医を目ざす医師のサポートをしてきました。平成26年8月から、院内で新たに「東京労災病院手外科センター」の名称を設け、さらに手外科専門医の育成に努めて行きたいと考えています。

 研修施設には豊富な「手外科治療を必要とする症例がある」ことが求められます。平成28年(2016年)、当院の手や肘に関連した手術件数は別表のように433件でした。内容を見てみますと外傷が大半を占めています(骨折・脱臼および抜釘など)。手外科の基本となる外傷を中心とした施設ですので、特に若い医師を募集しています。

3. 平成29年の手術実績(表)

平成29年の実績では、外傷では再接着術、皮弁形成術が増え、慢性疾患では、舟状骨偽関節、キーンベック病に対する血管柄付骨移植術、人工指関節置換術が増えました。

2017年(1月~12月)手・肘の外科手術件数
内容 件数
総数 418例
手根管症候群 23例25手
  うち対立再建術 1例1手
肘部管症候群 10例12肘
骨折・脱臼 235例
  橈骨遠位端骨折 75例76手
  肘周辺骨折 39例39肘
  尺骨突き上げ症候群・TFCC損傷 1例1手
  マレット指 14例14指
  中手骨骨折 25例27手
  舟状骨骨折(偽関節、血管柄付骨移植術) 6例6手(4例4手)
  月状骨・月状骨周囲脱臼 1例1手
骨軟部腫瘍(手・前腕) 8例8手
靱帯手術 14例14手
筋腱手術 21例21手
デュピュイトレン拘縮 2例2手
ばね指・ドケルバン 60例60指
腱鞘炎(ばね指・ドケルバンを除く) 5例5手
キーンベック病手術(血管柄付骨移植術) 2例2手(1例1手)
CM関節症 6例6手
RA(関節リウマチ) 5例5手
人工指関節置換術 4例10指
切断指・肢再接着 4例7指
その他(抜釘を含む) 74例86肢

東京労災病院手外科センター
センター長 富田 善雅(とみた よしまさ)
日本整形外科学会認定専門医
日本救急医学会専門医

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