言語療法

言語聴覚療法

2名の言語聴覚士(Speech Therapist:ST)が、脳卒中・脳外傷等によって言葉や飲み込みに問題が生じた成人の方を対象に必要な検査、訓練およびその他の援助を行っております。

言語障害について

脳卒中・脳外傷後の言語障害には主として「失語症」「ディサースリア」「摂食・嚥下機能障害」「全般的精神活動低下に伴うコミュニケーション障害」の3つがあり、障害の違いにより、訓練方法や日常での接し方が異なります。これらの障害が合併して生じている場合もありますが、以下のような点で区別しています。

  1. 失語症
    1. 脳の言語野に受けた損傷のために、ものの名前を正しく言えなかったり、相手の話を聞き間違えたりする状態。
    2. 知的に保たれているにもかかわらず「話す」「聞く」「読む」「書く」「計算」の各機能に障害がある。
    3. 一言も話せない、意味のわからない言葉をぺらぺら話すなど、症状や重症度はさまざまであるが、一般に50音表を見せるとかえって混乱してしまうことが多い。
  2. ディサースリア
    1. 口唇、舌、声帯などを動かす神経の障害のために、口唇や舌が動かしにくくなる、呂律が回らずに言葉が不明瞭となり、話が伝わりにくくなる等の問題を生じた状態。
    2. 「聞く」「読む」「書く」等のコミュニケーション機能は保たれており、うなずき/首振り、筆談等を介することでやりとりが可能。
  3. 摂食・嚥下機能障害
    1. 口唇や舌の麻痺のために、よだれが出たり、食物を噛んだり飲み込んだりすることにも障害を持つことがある。
  4. 全般的精神活動低下に伴うコミュニケーション障害
    1. 脳の広範囲に損傷を受けた場合や脳卒中を繰り返した場合に生じやすい。
    2. 会話をする意欲に欠け、問いかけても返答がなかったり、目を閉じてしまったり、笑顔がみられない状態。
    3. 生活面でも意欲が低下している。

訓練について

言語療法室
言語訓練の様子
言語訓練の様子

検査結果に基づいてご本人及びご家族に言語症状をご説明いたします。また今後の方針を立て、入院・外来での個人訓練によって、コミュニケーション能力の向上を目指します。

必要な場合には、医師やケースワーカー、他のリハビリスタッフと連携して、復職や退院後の生活についての援助も行います。さらに、一定の訓練が終了した後も引き続き援助が必要な方に対しては、福祉施設や友の会など、その方に合ったコミュニケーションの機会が得られる場をご紹介しております。

失語症、ディサースリア、摂食・嚥下機能障害、全般的精神活動低下に伴うコミュニケーション障害以外の言語障害、あるいは言語以外の高次脳機能障害につきましてもご相談を承り、当科で対処できない場合でも、関係機関への連携を行います。

摂食・嚥下機能障害について

口から食物を飲み込む過程は、以下のような6段階に分かれています。

  1. 食物の認識(覚醒しており、食べようという意識がある)
  2. 口への取り込み(口唇を開いて食物を取り込んだら、口唇を閉じて保持する)
  3. 咀嚼と食塊形成(よく噛んで唾液と混ぜ、飲み込みやすい塊にする)
  4. 咽頭への送り込み(舌の運動によって食塊を口の奥まで送る)
  5. 咽頭通過、食道への送り込み(嚥下反射によって食塊が食道に送られる)
  6. 食道通過(食道の蠕動運動によって食塊が胃へ運ばれる)

脳卒中等によって口やのどの神経が障害されると、主として2~5の段階に問題が生じます。これらの過程は外からの観察だけでは正確な情報が得られにくく、特に最も重要な誤嚥(食物が誤って気管の方に入ってしまうこと)の有無も確認できません。

嚥下造影2

飲み込む瞬間に食塊の一部が
気道に入り込んでいる
(喉頭侵入/誤嚥)。

嚥下造影1

飲み込んだ後も食塊の一部が
のどのくぼみ(喉頭蓋谷)に
残っている。

当科では担当医が嚥下造影(レントゲンによって食物を飲み込む様子がわかります)を行い、その結果をもとに方針を立て、安全かつ効果的な方法で訓練を進めていきます。

  • ※口腔器官の運動訓練をはじめとする間接的嚥下訓練(食べ物を用いないで行う訓練)はSTが中心となって行っています。
  •  ゼリーなどの嚥下訓練食を用いた直接的嚥下訓練では、体位・食物形態・ご本人の嗜好など、さまざまな問題点を医師、看護師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士他のスタッフと検討しながら、口から食べる喜びを取り戻せるよう訓練を行っております。

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