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遺伝診療部

当院では2024年7月に遺伝診療部を新たに開設しました。様々な診療科と連携し、遺伝性疾患に対して医療的・心理社会的なサポートをし、その後の健康管理を行って参ります。

対象疾患

  • 遺伝性腫瘍:遺伝性乳癌卵巣癌症候群、リンチ症候群、多発性内分泌腫瘍症など
  • 神経筋疾患:球脊髄性筋萎縮症、脊髄性筋萎縮症、Fabry病、ポンペ病、遺伝性脊髄小脳変性症など
  • 代謝性疾患:Fabry病など

遺伝性腫瘍

担当 金田陽子 (毎週火曜日午前、乳腺外科・遺伝性腫瘍外来)

「腫瘍」の原因は喫煙や飲酒などの“環境要因”、“加齢”、“遺伝要因”が挙げられますが、そのうち“遺伝要因”のために腫瘍を発生していると「遺伝性腫瘍」と総称しています。

乳がん卵巣がん症候群 (HBOC)

BRCA遺伝子に病的バリアントがあることにより、がん発症リスクが上昇する「遺伝性乳癌卵巣癌症候群」が乳がん全体の5~10%含まれるとされており、乳がんの他、卵巣がん・膵臓がん・前立腺がん等への罹患リスクが上昇します。BRCA遺伝学的検査は血液検査で行うことが可能です(ただし保険検査には一定条件が必要です)。検査の結果、必要に応じて遺伝カウンセリングを行い、家系員の遺伝カウンセリング・検査については関連施設である昭和大学病院へご紹介致します。

~BRCA検査保険適応~

  • 乳がん発症された方:45歳以下の発症、60歳以下のトリプルネガティブ乳がん、2個以上の原発性乳がん発症、第3度近親者内に乳がん・卵巣がん・膵臓がん発症者がいる、男性乳がん、近親者にBRCA1/2病的バリアントがある、HER2陰性の再発高リスク乳がん
  • 卵巣がん・卵管がん・腹膜がんを発症
  • 進行再発乳がん、卵巣がん、進行再発膵臓がん、去勢抵抗性前立腺がんにおいてPARP阻害剤の適応を調べる目的 (コンパニオン診断)

リンチ症候群

ミスマッチ修復遺伝子(MLH1/MSH2/MSH6/PMS2/EPCAM遺伝子)に病的バリアントがある場合、リンチ症候群となります。特に発症しやすいがんは大腸がん・子宮内膜がんで、その他、脳腫瘍・胆道がん・胃がん・膵臓がん・小腸がん・皮膚腫瘍・卵巣がん・腎盂尿管がんも発症しやすいとされます。ミスマッチ修復が正しく働かなくなると、細胞分裂を重ねることでコピーミスが蓄積され、がん化に繋がります。リンチ症候群のがん細胞では90%以上でコピーミスによりマイクロサテライト不安定性が増多しています。現時点でリンチ症候群診断補助として保険適応なのはマイクロサテライト不安定性検査とミスマッチ修復タンパク免疫染色で、病理組織検査となります。病理組織検査でリンチ症候群が疑わしい場合は、血液検査でのミスマッチ修復遺伝子検査となりますが、検査ご希望の場合は関連施設である昭和大学病院へご紹介します。 近年、70歳以下の全ての大腸がんや子宮内膜がんに対し、マイクロサテライト不安定性検査を行う「ユニバーサルスクリーニング」が欧米で推奨されており、当院でも消化器内科・外科と連携して検査実施を進めています。

多発性内分泌腫瘍症2型 (MEN type2)

ホルモンを司る「内分泌臓器」に腫瘍が複数発生する遺伝疾患で、RET遺伝子に病的バリアントがあることで発生します。MEN2型で最もみられる腫瘍は甲状腺髄様がんです。また一部の人では副腎に褐色細胞腫と言う腫瘍ができて、発作性な高血圧を起こすことがあります。また副甲状腺機能亢進症を認める場合があります。現時点で保険収載されているのは甲状腺髄様がんにおける血液検査でのRET遺伝学的検査です。 ※当院では保険収載されている範囲内の遺伝性腫瘍関連検査に限定し実施しております。自費検査の範疇については専門施設を責任持ってご案内させて頂きます。 ※遺伝性腫瘍についてご不明なこと・気になることがあれば、保険収載範囲外の疾患でも適宜ご相談を承ります。

神経筋疾患

脳神経内科外来を受診してください。癌と異なり、多くの遺伝性疾患は治療法がありません。しかし、球脊髄性筋萎縮症、脊髄性筋萎縮症、Fabry病、ポンペ病では、進行を抑える薬物治療があります。

代謝性疾患

担当 眞部俊 (非常勤腎臓内科医師、毎週火曜日、内科外来)